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モーニングカレー
今日は、特別な仕事があり、いつもより2時間早く家を出た。
さすがに、駅までの道も人通りが少なく、
空気も気のせいか澄んでいるような気がした。
近くの公園の、藤はもう咲き終わっており、つつじの花が今や満開だ。
さわやかな気分で、地下鉄にのり、JRに乗り換えて、
予定より30分はやく大阪駅へついた。
「さて、どうしようかな」
ここで、できる営業マンは、差が付くのだ。
スタートダッシュをかけなければならない。
考えるまでもなかった。「モーニングカレー」だ。
すでに体調万全の俺は、するどい視線で、駅の地下街をぐるりと見渡した。
基本的に、朝は食べない俺も、今日は気合が入っているのだろうか。
孫子の兵法で「腹が減っては戦が出来ぬ」という。(嘘)
昔の人は誠に良いことを言ったものだ。
そんなことを考えていると、いつものカレー屋が目に入った。
何か様子がおかしい。ひと気が感じられない、いや、まだOPENしていない。
こんな時間に空いていないとは、、やはりここにも不況の爪痕が、、
急に気持ちが落ち込んで、とぼとぼと歩き始めた。
そういえば、いつもより身体が重い気がする。
疲れているのか。。
突然、進行方向右側に、「モーニングカレー」の黄色い文字。
まだ他のカレー屋があったのだ。
大阪は広い。。。(同じ駅の地下街だが)
先程まで、重かった体が、まるで「Shall we dance?」の竹中直人ばりに
右へターンする。
そして「前へ」。
俺はラガーだ。しかもFW一筋。グラウンドを離れても、いつも呪文のようにつぶやく。
「一歩でも前へ」
中へ突入すると、おばちゃんの明るい声。黄色いエプロンにカレーの文字。
カウンターへ座ると、すぐにカレーが「ぷうん」と独特の匂いを放つ。
一口食べると、体中に力がみなぎる。
これだ。
がつがつ食らいつく。
ふと顔をあげると、俺以外にも4ー5名の男達がカレースプーンを握っている。
ある男は、スポーツ新聞を読み、またある男は虚空を見つめる。
こんなところに、日本の底力をみた。朝から、この食欲、
何かを感じるのは俺だけだろうか?
「日本経済はまだまだ安泰だ。みんな頑張れよ」
目の前が少しにじんだ気がした。涙なんかじゃない。これは、心の汗だ。
そう思っていると、突然となりのおやじが笑いはじめた。
漫画がおもしろかったらしい。
よくみると、おやじばかりだ。(俺もおやじなのか。。)人生いろいろ、
と思い直しカレーをかっこむ。
うまい。。。
朝から大汗をかきながら、やっとスプーンを置いた。
時計を見た。
遅刻だ。
まあいい、小さなことだ。
店を出て、「やっぱり大盛りにしとけばよかった。」と悔やみながら、
淀屋橋へ向かった。
俺はまた、風になった。

1998-4-30
# by nekomekuri | 2001-01-01 00:02 | ねこかわいがり