壊れかけのRadio
いつも一緒だった。
そして、出会ったころは、こんな日が、来るとは思わずにいた。。

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横浜、湘南、葉山に軽井沢、山中湖、、、
翌日に会社があっても全く気にせず、帰りが午前4時5時なんてあたりまえ。
疲れなんて、俺達とは無縁のことばだった。
海沿いを走りながらいつも歌っていた。。
「なぎさあーの、かせえーっ。とおーーっ」
(CDやMD、ましてMP3ではない。かせっと。である。)
そして大阪。
週末、気がつけばいつも大阪港にいた。
思い出すのは何故か、冬。
冷たい湾岸の風を受けながら、車に乗り込んだ。
にじむ街の灯。
大阪の海。
「。かなしい。。(小さくすすりあげる)。。いろ。。やねえええ。(こえ裏返る)」

そんなお前と俺の共通の敵はいつも2年に一回、召集令状とともに年末にやってきた。
最初は奴はたんたんと俺達に向かってきた。
俺達にとっては、たいした相手ではなかった。
ただ、粛々と最低の金額を支払えば良いだけだった。
だが、そんなお前も、2年前の召集では少し違った。
お前に昔ほどの力がないと分かっていた俺だったが、
なにか不安だった。
ガソリンスタンドで

「兄ちゃん、これ足がつるつるやわ。。」

そう言われて、大枚をはたいて足も替えたはずだ。
それでも、何かがおかしいことは分かっていた。
もちろん、俺とお前の仲であれば、すべて阿吽の呼吸でなんとかなったが、
他人がお前と向き合う時、人は少しだけ眉をひそめた。。

「診てもらった方が良いのでは、、これやばいよ。。」

皆がそういうが、お前は大丈夫と言っていた。
そして奴との戦い。連絡を受けた俺は安堵したものだ。

「今回はなんとか大丈夫です。一度しっかり診てもらった方が良いかもしれませんが。。」

今思えばあれがお前の最後の強がりだったのか。。
しかしその後、おまえは、急速に体を悪くしていった。。。。。

「窓を開けてくれないか。。」

俺がそういっても、おまえは30秒ほど動けなかった。
まったく反応しない時もあった。
また時々異常な音を出した。
「キリキリキリっ」
交差点を曲がる時、いつも皆が俺達に振り向いた。
昔は羨望のまなざしだった(想像)が、今は恐怖に満ちたそれであった。
そういえば、ガソリンスタンドの整備士にはいつも言われていた。

「これ、ベルトが切れそうやわ。。」

止まっていても、時々大きく上下に震えていた。
こんなとき、みかちゃんは心配そうにつぶやいていた。

「もう、ポンコツなんじゃないの?何か変よ。。」

それでも俺はいつも、なだめたものだった。
「今日は機嫌が悪いんだよ。たまたまだよ。たまたま。
Macだって、たまに爆弾がでるじゃない。人間だって体調ってのはあるしね。。」
年老いたラガーが、膝に手をついて息をしているようでもあった。

おまえについてるラジオ。。
感度最悪。。になっていた。
最近では、スイッチを入れると
「ががががあっ」
と宇宙人との交信のような音がした。

ドアの横のスピーカーは、俺がスパイクで蹴ったために、カバーが壊れていた。
気が付くとヨットのようなマークの下の赤い警告灯が点滅していた。
おまえはつぶやいた。

「水をくれ。。」

そのたびに、俺は対応してやった。
しかしお前はいつも乾いていた。
、、、2週間に一回はひどすぎた。

そしてお前は他者を拒むようになってきた。
俺だけは受け入れたが、他のものがお前のトビラを開けようとする時、
全く反応しなくなった。
いつも俺は中からお前をこじあけた。人は言った。

「これ、部品がバカになってるんちゃうの?」

何かにとりつかれてしまったのか。。
時々お前と俺をつなぐハンドルが極端に重くなった。
パワステが突然効かなくなるのだ。
特にカーブが危険だった。
しかし、俺とお前の仲だ。
俺は何ごともなく、大きく、力強くお前をあやつった。
人はそんな俺を見て

「トラック野郎。。」

そうつぶやいた。

そして、迎えた二〇〇一年末。
俺は、待つしかなかった。
そして奴らは、ついにお前に牙を向けた。

「これはひどいですね。もうあちこちぼろぼろです。さっと見ただけで、
オイルが2ケ所もれてますね。あとベルトが2ケ所切れそうです。
よく動いてましたね。これはもう、買い替えた方が良いですよ。。
もちろん、どうしてもって言うなら、うちも商売ですからやらなくはないですが。。
ああ、そうそうエンジンもいつ止まってもおかしくないですよ、、これもう。」
もう俺達に力は残っていなかった。。

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いつも、一緒だった。
あの日、あの時、あの場所で、おまえに会えなかったら、、、
俺の借金生活もなく、もう少し早くバブルから立ち直っていたかもしれないが、
その間の様々な出会いも、また無かったことだろう。
(あの当時みかちゃんは、喜んで俺に付き合ってくれていたと信じていたが、
つい最近、単に俺が恐くて断れなかっただけと知った。
俺としては、粋な男が外車で乗り付けているつもりだったが、
彼女からすると人相の悪い男が黒い小さな車で待ち伏せしていた、、
ということだったらしい。)

10年分の感謝を込めて。
春も夏も秋も冬も、いつもそばにいたのに。。
さよならいとしの GOLF CLi (1991年モデル)
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by nekomekuri | 2002-01-08 19:05 | ねこかわいがり
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