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アンドロメダ物語
深夜1時。
京都北山は、すでに深い闇に包まれていた。
秋の虫が夜の静けさをいっそう際立たせ、
ふと空を見上げれば、、、そこは満天の星空だった。

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つい先日、夏の風物詩、五山の送り火があったというのに、
もうすっかり「秋の気配」。
俺にとって秋といえば、もう10年以上「ラグビーシーズン」である。
深夜1時をまわったので、そろそろと俺は運動する格好に着替えて
先日買ったばかりの白いランニング用シューズを履いた。

久々に走るので、入念なストレッチをマンションの一階の玄関にて行った。
ここで一発気合をいれた。
「さあ、いくぞ!」
顔を上げたら、西の空に大きな三角形の星たちが見えた。
夏の間、天を制していた、いわゆる夏の大三角形
(こと座のベガ、白鳥座のデネブ、わし座のアルタイル)
がそこにはあった。

いつものコースは、まず西の方を向いて走るので、自然とこの夏の星座群が目に入る。
ベガは、特に0等星(1等星より2.5倍明るい)であることや、
比較的天頂(つまり真上)を通る星なので、
(つまり帰宅時間には、いつも見下ろされているような位置にあった)
夏の間はずいぶん偉そうで、冷たそうに見えたものだが、こうやって、西の地上へ
落ちこんでいく様を見ると、何やらもののあわれを感じてしまう。
ちょうどバブルのころに我が世の春を謳歌していた人々が
最近落日の憂きめにあっている。
人も星も「おごれるものは久しからず」とは、まさにこのようなことをいうのだろうな。。
とも思ったりする。

久々なのでしんどいかな?と思っていたが、シューズのせいか、快調だった。
心地よい汗が額から落ちる。
俺ってやっぱりさわやか路線で売るべきだよなあ、と考えてみたりする。
会社でも、しかめっつらしてばかりいるのは良くない。
後輩たちにも、もう少し優しく接する必要があるなあ、
今度笑い方を研究してみよう。
笑ったら歯が光る工夫をしてみるのはどうだろうか。。
忘れていた体の使い方を思い出すかのように、軽く(ラグビーの)ステップを
左右に踏んでみた。
いい汗だ。

ふと、前方に人影が見えた。
遅くまでやっている銭湯から帰る女性のようであった。
すれ違ったら
「こんな夜中に頑張ってる人もいるのね。私もがんばらなくっちゃ!」
とでも思われるに違いない。
もし、顔を見られたら、さわやかに微笑んでやろう。
そんなことを考えながら走っていると、急に彼女は、小走りをはじめた。

ん?おい、ちょっと。俺は怪しいものじゃないよ!
そう思ったものの、聞かれてもいないのに、そんなこと言うわけにもいかず、
結局彼女は、こちらを振り向きもせずに狭い路地に去っていった。

ったく、ひと目みれば、わかるじゃねえか!
そう思いながらも、それでも気をとり直して走りつづけた。
すると、ふと熱い視線を感じた。(不思議なもんで、見られてるとわかるんだよね)
誰かな?
長くなった前髪をかきあげながら、俺はさわやかな視線を道端へ向けた。
交番の中の警官が、じっとこちらを見ていた。

勘弁してくれよ。
ひと目みりゃあ、ラガーだってわかるじゃねえか。
とも思ったが、一般的にラガーというのは、
神戸製鋼の平尾あたりをイメージされるのかもしれない、と考え直した。
それでは、少なくともスポーツマンに見られるには、どうすればいいのか?
「まげを結うか。。」
とも思ったが、あまりに自虐的なので、考え直した。
どうでもいいことだが、今年は新弟子検査に一人しか希望者が来なかったとも聞いている。
相撲界も頑張って欲しい。

それはさておき、いつもの神社に到着。
体調も快調のまま、折り返し帰路につく。
星空はというと、アンドロメダ座やペルセウス座が既に空高く上っていて、
北のカシオペア座や(アンドロメダと位置的につながっている)ペガサス座とともに、
ギリシア神話の世界を展開していた。

俺はもともと天文少年で、今でもたまにプラネタリウム販売をするくらいであるから、
ここらへんを語らせたら、少なくとも弊社では一番であろう。
この商売は結構くせもので、お客さんを始め関係者が皆、いわゆる「おたく」なのである。
それは海外でも同様であって、通常の商売でメールをやりとりすると
1)Price
2)Q'ty
3)Insurance
みたいな単刀直入な単語ばかり出てくるのだが、
この商売は全く異なる。プラネタリウム館のコンセプトに関してだけでも
長い長いやりとりが行われ、出てくる単語は当然、通常と異なる。。例えば
1) Sea.... and ...Our ...Earth..
2) Star,Moon,Sun and ...Love...
彼らと話をするとき、俺は人類愛を歌うライオネル・リッチーの気分になる。
大事なのは、金や取引条件ではない、、、海、地球、宇宙、、そして「愛」なのである。

それはさておき、アンドロメダである。
以前、寝酒を飲みながらみかちゃんに、アンドロメダ物語をしてあげたことがあった。
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「カシオペアってのは、嫌なおばちゃんで、
娘のアンドロメダがかわいいのが気に入らなかったんだ。
それで、難癖つけて、結局アンドロメダを化け物鯨の「いけにえ」にすることにしたんだな。
かわいそうなアンドロメダは、海岸に飛び出ている岩に貼り付けされて、
後は化け物鯨に食われるのを待つばかり。
ついに鯨が登場して(ちなみにこの鯨も星座になってます。)口を大きくあけた瞬間、
そらから白い翼を持った馬、ペガサスに乗った勇士ペルセウスが登場したってわけだ。」
「ふうん、ひろだったら、ペガサスじゃなくて、ラバとか、せいぜいおんぼろゴルフ号ね」
「・・・まあいい。ちょうどそのとき、ペルセウスは、ちょうど良い武器を持っていたんだ。
メドゥーサの首ってやつだ。その首の持ち主は、髪の毛が蛇で、非常に怖い顔をしていたんだ。
その顔を見たものは全て石になってしまうというもので。。
まあ、強いだけじゃなくて知恵もあったペルセウスは、何とかそいつに勝って、首をとり、
袋にいれて持ってたわけだ。」
「知恵がいるんじゃひろはだめね。もっとDHA食べたほうがいいわよ。」
「・・・そこで、ペルセウスは、その化け物鯨に、その首を突きつけたわけだ。
間一髪、鯨は石になり、アンドロメダはまさに白馬に乗った奴、ペルセウスに助けてもらい、
あとはたぶん幸せに暮らしたんだろうなあ。。」
「すごい、いい話ねえ。。(うっとり)」
「ここで、俺なんかが現実的に考えたとき、いくつか疑問が出てくるんだ。
1)まず、ペルセウスは瞬時に首を取り出したわけなんだけど、気持ち悪くなかったのか?
2)次に、そのような一刻を争う状況で、首を取り出したとき、
  メドゥーサの顔が自分の方を向いていなかったのか?もし、自分の方に顔が見えていたら、
  ペルセウスが石になっていたのでは?
3)たとえ、ペルセウスが見ていなかったとしても、馬のペガサスが見たのでは?
4)鯨をやっつけ、大喜びでアンドロメダを迎えに行った、ペルセウスは、
  進行方向に向けていたメドゥーサの顔をアンドロメダに見せてしまったのでは?
これらの場合、ペルセウスは別の意味で神話に残っただろねえ。」
「本当に夢のない人ねえ。。(怒)」
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秋の星座の下には、既に冬の星座、おうし座やぎょしゃ座、そしてオリオン座が見えはじめる。
星座達の物語を思い起こしながら、体も心も充実して、深夜のランニングを終えた。

階段をかけあがりながら思った。
「そうだ、この星空を今すぐみかちゃんに見せてやろう。」
いつのまにか、さわやかモードに戻った俺は、先ほど練習したさわやかな笑顔で
部屋に入った。

「ただいま!ねえ、星がとてもきれいなんだけど。。。」
彼女は、両指をクロスして身構えていた。
いわゆる「えんがちょ」である。
一歩近寄ると、彼女は言った。
「やーだー、、、こっち来ないでよー。なんでそんなに汗がしたたってるの??」
「いや、ちょっと太っているもんで」
「早くお風呂へいって、ああ、そのヘンに汗落とさないでよ!
もう、、、ホントにおじさんは困るわ!!」
こうして俺はまた、理知的で、さわやかな印象を彼女に植え付けることに失敗した。


2000-9-8
by nekomekuri | 2001-01-01 00:35 | ねこかわいがり
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