人気ブログランキング | 話題のタグを見る
夏の思い出
今日は、ちょっとだけ仕事をしたので、帰宅が23:30になってしまった。
五山の送り火が終わり、京都の夏もこれで終わりか、、とも思っていたが
終電近くの時間でも、地下鉄から家まで歩くと汗でぐっしょりになる。

「ただいま」
と玄関から台所に直行し、
「いつになったらネタが切れるのか?」
といつも思うみかちゃんの作る夕食をのぞきこむ。
それから、隣の部屋へ行き、ようやく俺はネクタイを緩める。

新聞にリストラの文字が出ない日がないように、比較的甘い弊社でも
部長の命令により事業の見直しが行われている。
今日も、過去に遡り、個別事業毎の収益とそれに投資した時間について
分析、考察を行ってきた。

なんでもそうだが、増やすのは簡単だが、捨てる、減らすのは難しい。。。
そんなことを考えながら、いつの間にか俺は、精悍な企業戦士から、
ぷくぷくとした、汗をかいている ただの太った男になっていた。

いつものように、夕食をばくばくと食べ、ふうふう言いながら食器をかたづけ
そしていつものように至福の時が訪れる。
うちのクーラーは風がフローリングの床にあたるため、そこだけが
妙にひんやりしている。
いつの間にか、短パンと4Lサイズのタンクトップになっていた俺は、
腹を出したまま床に寝転がる。

冷たい。。少し転がってみる。。これも冷たい。。ああ、もうダメになりそうだ。。
子供の頃、「食べてからすぐ横になると牛になるよ」と言われたものだが、、、
、、牛も悪くはない。

そういえば、学生のころ、ラグビーの夏合宿でも俺は寝てばかりいた。
季節もちょうど今頃。まだ、夏は終わっていなかった。。。

うちのラグビー部の夏合宿は、何故か関西から山中湖へ行ったりする。
たいがい、8月16日から11日間で行われるため、五山の送り火は見られない。
練習は、それなりに過酷で、BK(ラグビーで走る人)は、それなりに過ごすのだが、
FW(ラグビーで押したり、ぶつかったりする肉体労働をやる人)、それも
スクラムの一番前で戦う俺のポジションは地獄だ。毎日が消耗戦で、だんだん
疲労がボディーブローのように(ある意味タックルをつづけていれば同じコトだが)
効いてくる。

飯ものどを通りにくくなる。仕方なくビールを食前に流し込み、満腹中枢を麻痺
させてから、飯を文字通り、胃に詰め込む。
何故かグラウンドでは、必死なので、動けるのだが、練習が終わり合宿所へ辿りつくと、
もう移動することもままならない。

洗濯も辛くて、結局、洗濯をしないで、何回も汚いラグパンをはいたりする。
朝の練習が終わり、昼飯をつめこんだあとの昼休み、俺は(他の同じポジションの
連中も)部屋の中でじっと寝ていた。

外でテニスをしている若者(別に歳は同じくらいだと思うが、なんとなく)
の歓声が聞こえ、太陽が高くあがって、部屋はなんとなく日陰になっていて、、、
そんな中、俺たちは、午後のために少しでも体力を回復させるべく
じっと布団の中で、息を潜める。なんで俺はこんなことをしているんだろう。。
そう思いながら、自分の身体の回復力をじっと信じて耐えていた。


午後の練習がやっと終わって、合宿所へ帰り、夕飯を待つ間、また俺は食堂の前の床に寝ていた。
(もちろん、床が気持ちよかった訳ではなく、あまりに疲れていたので、
部屋にいったん帰ったら、二度と食堂へはたどり着けない気がしたからだが。。)
こんな時、いつも考えていることは同じだ。

「ああ、今、この瞬間が次の練習時間に最も遠い。。」

ささやかな幸せをかみしめながら、じっと目を閉じて、この瞬間が永遠に続くのを祈る。
ところが、この幸せをうち砕く、無慈悲な奴らが現れる。

合宿所の家の「悪ガキ達」だ。(たぶん小学1,2年生)
奴らは、俺にそっと近づいてきて、なにか長い棒で俺をつついてくる。
ここらへんで、既に「人と人とのコミュニケーション」は破綻している。
初めて会った人(それも目上の人)に対して、最初にコンタクトをとる
方法が「長い棒の先でつつく」だとは。。
残念ながら、当時の俺は「人に礼儀を教えること」はあまり得意ではなく
(今でもそうだが。。)

最初は、面倒なので無視していた。
しかし、あまりつつくので、せめて生きていることぐらい示そう
と思い「うるせえなあ」という顔つきをしてキッと目を見開いた。
「マグロだー! マグロが目を覚ましたー!」
奴らはそう言って、走り去っていった。

当時は結構屈辱的だったような気がするのだが、
今となっては俺にとっても、彼らにとっても、たぶん、良い思い出だ。

「あの時は「マグロ」で、今は「牛」か。。どちらがグラム単価が高いだろう。。」

冷たい床で寝転がりながら、みかちゃんにとうとうと
「格好良かった俺の話〜夏編」
をしてやったつもりだったが、
突然、「にゃあちゃん♪♪(ハムスターの名前)」と歌いながら、
あっちへ行った。

今日も、みかちゃんは、全く俺の話を聞いていなかった。

1999-8-24
by nekomekuri | 2001-01-01 00:18 | ねこかわいがり
<< オープンハートものがたり まわるすし物語 >>