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心の旅
渋谷。
街は夕暮れ時のオレンジ色に包まれていて、ひとつ、ふたつと明かりが灯り始めていた。

駅に向かう人々の群れにまぎれながら、ずっと考えていた。
- 今日はいい試合だった。
全身が心地よく気怠い。
点差は開いて負けてしまったが、本当に今日はトライが欲しかった。
後半、せめて1トライだけでも返そうと、恐らく数年ぶりにチーム全員が一体となった時間帯があった。
あの瞬間のために未だにグラウンドを離れられないと言ってもいい。
久しぶりの感覚、チームの一体感であった。

考えてみたら学生時代は体力、気力ともにもっと充実しており、
毎試合毎試合、いや、シーズンを通してあの集中力、緊張感、一体感が持続していた気がする。
思えば、負けるたびに深く苦しみ、そして幸運だったことに、いつも崖っぷちでは勝利することができ、涙した。
たぶん、あの当時の「感情の異常なまでの起伏」はグラウンドにいる15人だけでなく、
先輩、後輩試合に出ていない部員達、全ての思いが一体となり、増幅されていたからなんだろう。。

ふと京都ですごした、あの学生時代が恋しくなった。

- そうだ、京都行こう。

そうは思ってみたものの、現実は厳しく、財布にもそんな金はなかった。
何もJRに乗って行ける京都だけが京都ではない。
もっと自由に心を解き放ち、違う枠組みで考えてみるのだ。。
ラグビー、心地よい気怠さ、夕暮れ、、、、そうだ。。

- 王将へ行こう

渋谷のガード下には、何故か餃子の王将がある。
学生時代、試合を終え京都市内に帰ってきたら、まず飯、そして風呂であった。
当時も王将ばかりに行っていたわけではないが、何となく懐かしい。
勿論、天一という手もあるが、あれは食事に行くところではない。
当時、「こってり、大(大盛り)、学生(50円引)」は、寝る前の夜食であった。
(「ハイカラと牛丼大」という手もあった。こっちは「なか卯」。)

店の前まで行くと、何故か人の列が出来ている。
よく見ると学生と思われるカップルが目につく。
- 世もデフレなのか。何も渋谷に来て王将に来なくても。。最近の若い奴は。。
さっきまで、学生気分だったのが嘘のように既にオヤジの視線になっていた。
そのままの気分で、店に入りカウンターへ座り、
「オヤジぃっ、ラーメン、ライス、餃子、ビール一本!」
と言いそうになったが、寸でのところで我に返った。

みかちゃんによると、新しいことに興味を失うのは、既に老人の始まりだという。
- やはり、一応メニューを見た方がいいよなあ。。

まず定食を見た。
様々な定食があり、様々な角度から検証、シミュレーションを行ったが、ここは餃子の王将。
まずは、やはり「餃定(餃子定食)」である。
これでは、先ほどメニューを見ずに餃子を頼もうとしたことから進歩がない、
そう思われる方もいるであろう。
しかし、目先の結果、行動が同じでも、その思考過程が大事である。

目標(おいしい食事)に到達するための戦略オプション(定食の種類)を全て検討しつくした上で、戦略(定食)を決定する。
このプロセスが、その次の判断(次の一品)を助け、中長期的には結果(食事に満足したかどうか)は大きく異なる。
この戦略思考が大事である。
コンサル会社の人がそんなことを言っていたなあ、、と考えながら
いつもの「餃定」を選んだ自分を納得させる。

問題は次の一皿である。
学生時代なら迷わず、「かに玉丼(大)」である。
しかしいつも炭水化物の取り過ぎと怒られている俺としては、次はおかずだけ、単品で流したい。
八宝菜、麻婆豆腐、野菜炒め、青椒肉絲、、、

ふと、後ろに視線を感じた。
振り返ると、誰もいない。が、
目線を少し上げると

「かに玉、セール 50円引」

のポスターが俺を静かに見つめていた。
「かに玉」単品は、当然「かに玉丼」より高い。(同じ理由で麻婆豆腐は麻婆丼より高い)

- かに玉だな。。
運命とはこういうものだ。

紅葉で有名な京都-南禅寺永観堂には、「みかえり地蔵」と言う非常に珍しいお地蔵さんがいる。
昔、南禅寺のお坊さんの夢に地蔵が出てきて、自分の前を歩いていた。
ふと、その地蔵が振り返り「歩みが遅い。もっと早く歩け。」と叱咤激励したというような云われがあったはず。
思えば、今日は京都に思いを巡らし、自分の心の中に京都を探す、いわば「心の旅」であった。
「振り返って」かに玉のポスターを見つけた。
これは京都の見返り地蔵に因縁のようなものを感じたのである。

ところで、「因縁」というのもまた京都では印象に残った言葉であった。
京都駅前、ローソクの様な京都タワーの後ろには、東本願寺がある。その東本願寺とそっくりな寺が少し西へ行った
堀川通沿いにある。西本願寺である。
本願寺だけが強大にならないよう、内部分裂させるために時の将軍?天皇?が東と西に分けた、、、
みたいないわれだったように記憶している。

ここの寺が、「蓮如誕生○○年記念祭」みたいなことをやっており、寺らしからぬ「R」(RennyoのR)の旗を
立てまくり各種イベントをやっていたことがあった。
近くを歩いていたときに、イベントのパンフレットをもらったら、「ゲスト:五木ひろし」と書いてあった。
「何で、蓮如と五木ひろしなんだよ。。」
と彼のコメントを読むと

「私のオヤジが亡くなって、今年で23年、何か蓮如と因縁のようなものを感じます。。」
みたいなことが書いてあった。

23年だったかどうかは定かではないが、とにかくキリの良い数字ではなく何の関連も感じさせず驚いたものだった。
これなら、例えば
愛知万博に対して「私が卒業してから14年、何か因縁のようなものを感じます」」とか、
中国のオリンピックに対して、「私が中国ビジネスを始めたのが、11年前、何か因縁のようなモノを感じます」とか
何にでも使える。

話は長くなったが、結局、「餃定」と「かに玉」を頼んだ。

餃子はいつも通り、大きさ、数ともに申し分無かったが、かに玉には驚かされた。
箸で「かに玉」を刺すと、いつもと感触が違う。
皿の底まで全部「かに玉」だったのだ。
思えば今まで王将とは長い付き合いであったが、かに玉丼でなく「かに玉」を頼んだのは、今回が初めてであった。
思えば俺も偉くなったものだ。
もう学生ではない。。あの甘く切ない日々も遠い思い出だ。。さらば京都。。

「兄ちゃん、かに玉追加ねー」
隣に座った学生が、俺の感慨を打ち消した。
「学生のおまえが「かに玉」を頼むんじゃない!俺はかに玉まで10年以上かかったんだ!
 まず「かに玉丼」にしろ!」
いつもの俺ならそう思うところであるが、今日は大人として、人生の先輩としての余裕があった。
京都から積み重ねてきた歴史が、俺を変えたのかもしれない。。

- 若いの、まず俺を超えて見ろ!
俺はニャリと笑い、挑戦を受けて立った。
「餃子2皿、あと焼きそばも追加ね。」


今日も満腹満足であった。
席を立つとき、全身に激痛が走り、今日の試合の激しさを思い出した。
- もしかしたら、筋肉痛ではなく、単なる全身打撲なんでは?

やはり、昔とは違う、、そう思いながら、俺の心の旅は終わりを告げた。。
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by nekomekuri | 2005-01-05 10:00 | ねこかわいがり
Sweet 10
※初めての方はまずコチラをどうぞ。

いつかそんな日が来るとは思っていたが、ついに結婚10年目を迎えることとなった。
誰が名付けたか(宝石屋だろうけども)、Sweet 10。
我が家において季節の節目、特定日(みかちゃん誕生日等)の行事は極めて重要と去年も書いたが、今年の結婚記念日は特に重要である。

思えば、10年と少し前。
婚約式の際に資金不足と常識の欠落のため婚約指輪が間に合わず、
いまだに彼女の実家では「だいたいあいつは。。」と語りぐさになっている俺である。
その後も、苦労をかけっぱなし。
せめてこのSweet10だけは用意周到にしなければならないと決意していた。

まず、Sweet 10資金引当金勘定を数ヶ月前から準備し、相応のCashを移動。
これにより支出の際にも通常の家庭内損益計算書に影響を出さないように用意し、
どのような指輪が欲しいと言われても対応可能な状況を作り出す。

そして花束。
彼女が草月をやっていることもあり、
常日頃から我が家にいつも花(や草木)はあるのだが、
よく考えたら、俺のほうから久しく花をプレゼントしていない。

早速ネットで調べたら、「バラ100本注文はこちら。」みたいなページが山ほどある。
しかも、価格は予想の1/10くらいのものまであって、非常にお得。思わず
「激安じゃん。。」とつぶやく。
ここで、はたと気がついた。先日も彼女にこう言われていた。
「ひろの基準は、激安、大盛り、お得でしょ。私は中途半端なら我慢。
本当にいいものなら高くても無理しても……、なのよ。
価値観が違う人と暮らすのは辛いわ。」

あぶないところであった。ここで100本の激安のバラを贈ったら、
この10年の経験は無駄だったことになる。
すぐさま頭を切り替え、近所にある有名な花屋に連絡、バラの花束を注文した。
(本数は20本。泣)

次に例年なら、レストラン選びである。
しかし今年はまだみかちゃんの体調が悪く、普通の食事では食べられそうにない。
かと言って、今年は俺だけ牛丼を食べて、、というわけにも行かないので
近場のバーで一杯やり(つまみで夕食とし)、
その後、「山崎10年」を買って家で飲むことにした。

このアレンジは我ながら考えたもので、
山崎には12年ものもあり、その他の酒で、15年もの、17年もの、21年もの、
30年というものもあることが分かっている。
将来の結婚記念日も、この行事はずっと継続していくことができ、
毎年、積み重ねられた時間を感じることができる。
これをワインでやるのは実力的にちょっと無理そうだが。。
さて、とりあえずこんな準備をして、その日の朝を迎えた。。。


朝9時起床。
その日は朝から「ネコの取材」のため、某社の方々が我が家へ来ることになっていた。
ネコの取材とはいえ、気まぐれなネコのことである。
簡単に撮影等が終わるはずもなく、某社の方々も時間を持て余すことが予想された。
このため彼女は、数種類のケーキと簡単なサンドイッチを昨晩から作っており、
俺の役目は飲み物を買ってくること。
近所の酒屋に向かう間、少し考えた。
「今日は特別な日だから、ジュースやお茶ではなく、ワインかシャンパンだな」

c0024561_19451521.jpg


結果的には、彼女が作ったハーブ系のサンドイッチに合うシャンパンだったこともあり、このアレンジは奏功する。(評点4)
某社の方々にまで、結婚記念日を乾杯してもらった挙げ句、
ネコを撮りにきたプロのカメラマンの方に人間の記念写真を何枚も撮ってもらい、
彼女はほろ酔い気分ですっかりご機嫌。まずは上々の滑り出しであった。(評点5)

この後すぐに、毎週彼女が通っている高名なお花の先生のところまで、車を走らせる。
彼女が先生宅の門を入っていくことを見届け(評点4)、
少し今後の段取りについて考える。
「今日の予定は、ここへ行って、ここへ行って。。。Zzzzz」
人間、慣れない頭を使うものではない。
彼女がレッスンを終え、車まで帰ってきた時には俺はよだれを垂らしてイビキをかいて寝ていたらしい。(評点1)

気を取り直して、次の目的地をどこにするか考えた。
実は、この後、
・山崎を買う
・山崎を飲むためのバカラのコップを買う
・Sweet10の指輪を買う
・花を取りに行く
というTaskが残っていた。

地理的効率を考えれば、バカラ、花、山崎、Sweet10の順であったが、重要度から敢えて
Sweet10、バカラ、山崎、花、と地理的要因を無視した順番でいくことに。
が、この判断が良くなかった。

結局、時間は掛けたものの、指輪は良いものが見つからず(評点2)
何とかバラの花束はPick upしたものの(評点3)
バカラを買おうとしていた新宿高島屋があと15分で閉まる、という状況で渋谷にいた。
しかし、知っている酒屋もそろそろ閉まる時間である。

ここで、高度な判断が要求された。
最悪の場合、バカラも山崎も買えず、
100円ショップのコップで、コンビニで買ったトリスを飲むことになる。
後日、Sweet10のことを思い出した時に重要なのは、どちらか。
「形が残るものだ。バカラさえ残れば、例えトリスを飲んでも、30年もたったら『あれはオールドだった』くらいにはなる。。」
俺は一気に新宿方面へハンドルを切り、閉店時間を過ぎていた高島屋へ強引に入り込んだ。ついに長年我が家の主力だった200円コップに別れを告げるバカラを入手した。(評点4)

この後、
良い思い出にするために山崎が買える少しでも上品な深夜酒屋探しをやり、(評点4)
結局、人に言えないような店で「山崎10年」を買い、(評価2)
某サイトで紹介された近くのバーに行くまでに道を間違え、(評価1)
訪問して、その店がつぶれていたことを確認。(評点1)

c0024561_19452961.jpg今年もネコを発見し、(評点5)
結局近所で気になっていたバーに変更。(評点3)
耐えきれず、一人だけオムライスをがつがつ食べ、(評点1)
オムライスに入っている材料を聞かれ答えられず、
「私が何を作っても結局わからないのね」
と言われ(評点1)
家に戻ったのは夜中の2時であった。。

シャワーを浴びて、山崎を開けたら3時すぎ。
坂本龍一の「山崎」のCMの音楽を流し(評点4)
そもそも彼女の方が坂龍のCDを借りて酒を飲む時にかけようと思いついたことを忘れて
「いいCD借りてきただろ?」と得意になり成果を自分のものと勘違いし(評点0)
一杯飲んだ後、「やっぱり酎ハイにしていい?」と聞いてがっかりされ(評点0)
その後、彼女がロックで飲んでいるのにも関わらず、
「山崎にするから、俺は水割りにしてもいい?」と聞いてあきれられ(評点0)
夜が明ける頃ようやくへろへろになって、長い一日を終えた。
c0024561_19455142.jpg



(ご父兄の方へ : 連絡欄)
努力はしているようですが、まだまだです。
まず、苦手科目をのばすこと。
すぐにいい気にならないこと。
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by nekomekuri | 2004-06-05 19:41 | ねこかわいがり
庶民と料理家
ーー その1 ーー

「どう?メキシコっぽくない?」

結婚前、みかちゃんと食事に出かけた時、メキシコ料理屋につれていった。
俺はそこのメキシコサラダがお気に入りだった。
木彫りの器に、コーンがぎっしり入っていて、赤い粉のようなものがかかっている。
味は特殊なソースを使っているようで、シェフの秘伝のものらしい。
いつも、たくさん食べたいので「大盛り」にしてもらっていた。
これが、自分の家で食べられたら。。

「な、うまいだろ?専門店だからなあ。。」
グルメを自認する俺はニヤリと笑った。

結婚後のある日、貧乏で家にコーンの缶詰しかなかった。
みかちゃんは、「じゃあ、これで何とかするわ」
気落ちする様子もなく、彼女は台所へ消えた。
しばらくすると、彼女はガラスの皿にきれいにもったコーン料理を持ってきた。
よくあの材料で、こんな料理っぽくできたなあ。。そう思いながら、一口食べて驚いた。。
「あれ、、これってあの店のメキシコサラダと同じ味がする??」
彼女は言った。
「え、だって、あのサラダ、オーロラソース(ケチャップ+マヨネーズ)にチリパウダーだから
 簡単じゃない。ひろが好きだと思って。」


ーー その2 ーー

やはり結婚前。
デニーズのサラダが好きだった。
いつもラグビーの試合前、デニーズでサラダを食べていた。
ある日、みかちゃんを連れてデニーズに行った。
迷わずサラダを注文。一皿ずつ食べた。

「ここはファミレスだけど、このドレッシングだけは特別なんだよな!
 どうやっても、このドレッシングが見つけられないんだよなあ。。」
当時は今ほど食材、調味料が多くなく
あの味のドレッシングは俺のまわりには存在しなかった。
ファミレスの意外な逸品を紹介して、俺は鼻が高かった。
やはり結婚後、ドレッシングが買えなかった。

彼女はいつものように
「じゃあ、あるもので何とかするわ」
そういって、台所へ消えた。
出てきた時には、あの材料が何故こうなるのか、、と盛りつけられていたサラダがあった。
一口たべてびっくりした。
「あれ、、このサラダ、デニーズのあのサラダと同じ味だ??」
彼女は言った。
「こんなのしかできなかったけど、確かあのドレッシングがおいしいって言ってたでしょ。。」

そんな俺も最近では
「うまいねえ、このじゃがいものポタージュ」とかぶのポタージュを食べながら言ってみたり、
「いや、これはすごい。きゅうりがこんなにチーズと合うとは。。」とズッキーニのキッシュを評したりして、
「ホントに味音痴なおじさんは困るわ・・。ハンバーガーでも食べてくれば?」
と我が家で親しまれている。。。(泣)
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by nekomekuri | 2004-01-10 19:41 | ねこかわいがり
1円も使わない鬼夫の旅
年末、数年ぶりに夏休み(?)を取ることになった。

東京に転勤してきてからというもの、Weekdayは夜を徹して働き、
週末はぐったりして、寝て過ごす、、というパターンを繰り返していた。
しかも春、秋は土曜日に睡眠不足解消、日曜にラグビーというパターンで
みかちゃんをどこかに連れて行く時間が全くなかった。
罪滅ぼしに、少し長めの旅行に行こう。
そういえば、欧州へ取材に行きたいと言っていたし。。

ここで、大変なことに気がついた。
金がない。
そういえば今年は家を買ったのだった。。。

先日、彼女に「今年、自分の一番のニュースは何?」と聞かれて
「数年ぶりにスクラムトライを取ったことだな。。」と答え、殴られたのだが、
実は家を買っていたことを忘れていた。
手持ちの通帳を、考えられるあらゆる角度から眺めたが、使える資金は特に増えたりしなかった。

そういえば、大学受験の時、合格者番号通知を郵便で受け取り、同じことをやった。
あるはずの番号がなかったことは言うまでもない。今では甘く切ない思い出だ。。泣)
どうやってこの場をしのぐか。
簿外資産の活用である。。。

ということなのだが、今回の話にオチはない。
結局、現地のホテル代、食費、その他生活費は全てみかちゃん持ち。
航空券は、支払いのほとんどをカードでやっているおかげで
もうすぐ期限切れを迎えるマイレージがたくさんあり、
往復ファーストクラス(!)で行くことに。
僕は貧乏性なので、エコノミーでアジア等の近場を何度も行きたいと思うのだが、
彼女はメリハリ派なので、4、5回アジアにエコノミーで旅行するくらいなら、
1回ファーストクラスで欧州まで行く方を選ぶタイプだ。


因みに、家を買う判断は彼女がしたが、
車は僕が選んだことは言をまたない。
「低い車」ご参照)
彼女はたまにきちんとしたレストランに行きたい、後は自分で家で作る、というタイプ。
僕は、同じ資金があったら毎日カレーとラーメンを交互に食べに行き、楽をしたい。


宿泊は、ほとんどをエコノミークラスのホテルで過ごし、
クリスマスと最終日だけ2、3倍の価格のホテルで過ごす。
1回くらいスーツを着るようなレストランにも行きたいが、
あとは地元のデリや市場めぐりだろう。。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

ということで、今回私は1円も使わない旅に行ってきます。(鬼夫)
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by nekomekuri | 2003-12-10 19:37 | ねこかわいがり
庶民と音楽家
「あれ?」
最近、コンビニで鼻歌をうたっている自分に気づく。
どうしたことだ。
この感覚、忘れていた しっくりくる感覚。。
体が勝手にグルーブ(死語)する。もうノリノリ(死語)だ。

原因がわかった。
最近、リバイバルした曲がかかっているのだ。
どうやら音楽以外でも、あちこちで80年代のものを中心に古いものが復活しているらしい。
山口百恵、久保田早紀、ザ・ピーナッツ、H2O、、
次は原田真二か岸田智史あたりが来ると個人的には予想している。

ところで我家の有線放送のリモコンには8つ短縮ボタンがある。
そのうち2つ(泣)が俺の割当だ。
チャネルはご存じ「ヤング☆ナツメロ」
「80年代歌謡曲」の2本。
聞いているうちに、いつしか思い出の中をさまよっている自分に気づく。

考えてみれば当時の曲には一貫したドラマ性があった。
どの曲にもそれぞれが持つ固有のシーンがあり、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
横浜、横須賀、校庭、音楽室、夕日、グラウンド、、
ふと、つぶやく。

「こんな曲、もう誰も作れないんだよなあ。。これは、あの時代、あの空気があってこそだからなあ。」

すると、みかちゃんが横でネコをなでながら、あきれる。
「ばかねえ。音大の学生なら、いくらでも似たような曲作れるのよ。
 だいたい、一つの曲をベートーベン風、ブラームス風って作り分けられるんだから。」
。。少しがっくり来たが、気を取り直して久しぶりにCDを聞いてみることにした。
こんな夜は、京都を思い、しっとり行きたい。
アルバムは勿論、PACIFICMOON社のまったりしたシリーズの中から「京」

先日、英国からの客人にも1枚贈呈し絶賛された。
「これを聞き、また日本が好きになりました。。」と。
実際、どれを聞いても心にふれるものばかり。
いくつかの曲はわらべ歌を基調としたもので、ひとつのテーマを
自由に展開しながら、それでいて何故か日本的なイメージはくずさない。
京都に生まれ育った訳ではないのに、何故か子供のころからあそこにいたような気になってくる。

「日本人の心を失ったら、こういう曲は作られなくなるんだろうなあ。。。」

ふと、思ったことを口にする。
みかちゃんがネコと闘いながら、あきれる。

「あのね、よなぬき(4番目の音「ファ」と7番目の音「シ」を使わない)で曲を作れば、
 みんな、日本っぽく聞こえるのよ。あんまり色んなこと口にしないほうがいいわよ。」
音楽家と庶民が暮らすとこうなる。。
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by nekomekuri | 2003-11-16 19:34 | ねこかわいがり
おばちゃん財布
「おばちゃん財布」と一般的に言われるものがある。
買い物に行くときに使うモノが何でも入っている「パンパン」の財布のことだ。
スーパーで使うポイントカード、各種割引券、レシート、小銭はじゃらじゃら・・・・。
不格好だが何でも入っているので、どんな店でも対応できる。
貰えるモノは特典だろうが、ポイントだろうが、、逃しはしない、というところだろうか。
生きるための人間の努力の象徴といった趣さえ感じる。

さて、我が家の財布事情はどうであろうか。
賢明なる読者の方はお気づきのように、私の財布が「おばちゃん財布」であることは自明である。
理由について考察したい。
みかちゃんは

1)重いモノが嫌いである。それが財布であっても。
2)こせこせしたことが嫌いである。それが「お得」であっても。
3)そもそも子供のころから、あまり財布を持ったことがなく、最近でも外出時に財布を忘れることが多々あるらしい。
  加えて、欲しいものは買ってもらうことに慣れている。
4)食料等の買い物は、週一回俺と一緒に行くので、財布は持たなくても金は出る。。

それでも、やはり彼女もコンビニくらいには入って買い物もするであろう。
お金が足りなくなったら、ATM支払い機を利用し、明細の紙が出てきたりして、自然に財布が脹れるのでは?
そう思われるであろう。彼女が普通の人であったならば、、という仮定が正しい場合である。
実態はこうである。

まず、一人ではコンビニに入らない。
一人で外食もしない。喫茶店で一人で茶を飲んだりしない。
いつ財布を使うのか?
友人や仕事関係の人と会うときだけである。
それでは、金が足りなくなったら?
彼女は実は、ATMの使い方が分からない。
どうするのか?
時々俺が彼女の財布をチェックして、足りない分をそっと補充しておくのである。(泣)

思えば、コスメデコルテのカードや美容院の予約カードから始まり、
一緒に外出中、急に必要になった時のための彼女の名刺、
みかちゃん名義の銀行のキャッシュカードまで常に持ち歩き、おばちゃん財布に甘んじている俺だが、
結婚して以来、ほとんど評価されたことがない。
何故だろうか?
彼女が普段どう言っているのか、下記の中から選んで欲しい。

1)昔から不自由を感じたことはない。(誰かが何とかしてくれていた)
2)人間は向き不向きがあり、自分は細かいことは向いていないが、俺は「お得」とかが好きだから。
3)それが存在価値だから。
4)俺がインチキ営業マンだから。
5)俺がインチキ商人だから。

答え
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by nekomekuri | 2003-10-13 19:32 | ねこかわいがり
せんのやつ
夕方、みかちゃんに電話をした。
どうも、しおしおしている。
弱っているようだ。

「どうした?」
受話器からは、「大丈夫。」の一点張り。
恐らく今日は暑かったのだろう。そしてクーラーを付けていなかったのだろう。。
京都に住んでいたころ、冷房費が月に5〜6万円かかっていて、
そのおかげで、なるべく日中はクーラーを付けない癖がついているようだ。
(結局それは、冷房のしすぎだったわけではなく、クーラーが古すぎて効率が最悪だったことが判明した。)

「よし、クーラーをつけよう。まず、窓を閉めて」
こういう時は、動作をひとつひとつ説明しないと彼女はうごかない。
クーラーをつけて、、と言うだけでは、「はい、はい」という生返事で全く動かないからだ。
しかし今日は、これでも動いたそぶりはない。

「どうした?まず窓が開いてるだろ、それを閉めてごらん?」
「できない」
「何で?」
「せんのやつなの。」
「何?」
「せんのやつがじゃまなの。」
「せんのやつ?」
「うん、せんのやつ。」
「せんのやつって何?」
「せんのやつなの。」
「せんのやつ、、じゃ分からないんだけど」
「でも、せんのやつなの。」

ここで、俺が怒り出したら、事態は更に悪い方向へ向かい収拾不能に陥る。
あらゆる事態を想定し、これ以上の質問をせずに30秒考え、
結果、俺は理解し、会話を終えることができた。
彼女は何がいいたかったのだろうか?
この手の謎解きができるようになるのに、結婚後9年かかった。

答え
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by nekomekuri | 2003-07-23 19:30 | ねこかわいがり
結婚記念日
9回目の結婚記念日。
用意のいい俺は、既に麻布霞町(西麻布)のフレンチレストランを予約していた。

イベントと言えば誕生日と正月くらいしか思いつかない環境で育った俺は、
結婚と同時に「年中イベント」のみかちゃんと暮らすようになり、
最初は、その文化的ギャップに戸惑い、かなりの失敗を繰り返してきた。
特に、記念日のアレンジは、極めて重要である。
実際、ここを滞りなくアレンジできるかで、その後の俺の家庭内地位が
「にゃあちゃん」(猫、ネズミ、魚、、全て同一の呼称)より上か下か決まるため
綿密な計画的行動が必要なのは言うまでもない。

そんなわけで、今日は業務を久々に定時で終え、地下鉄に乗った。
本来は、六本木か広尾で待ち合わせをしたいところだが、電車の乗り継ぎをすると、
みかちゃんが迷う可能性が高いため、敢えて青山一丁目で会うことにする。
約束より30分遅れたころに、ようやく携帯がなった。
「どこ?」
「地下」
「何が見える」
「うーん、黄色い看板」
最小限の情報で、首尾良く地下鉄青山一丁目駅、SUBWAYの前で立っている、彼女を発見。
何とか、タクシーに乗せた。
10分程度で、マンション探しですっかり詳しくなった西麻布に到着し、レストランを探す。
しばらく、うろうろした後、何とか予約した午後8時に店にすべりこんだ。
薄暗い店内奥の狭い階段を上がると、2階は10席程度の広さ。
外苑西通りを見下ろす席が予約されており、ほどなくメニューが配られた。

前菜2品とメインを1品注文し、パインシャーベット入りのシャンパンで乾杯。
いつもなら、演歌調の声で「いやぁー、お疲れ様!」とオヤジ丸出しでビールを飲むサラリーマンまるだしの俺も、
軽くグラスを合わせながら「おめでとう」
とにこやかに笑う。
今日の俺の株価は既に(5円高)と言ったところか。
よく見ると、みかちゃんの小指にはダイヤモンドの指輪が光る。
「ごめん、今日はプレゼントは用意していなくて。。」
「いいのよ、家を買うんだし。。」
極めて、良い会話の流れであった。(買い気配)
しかし、次の質問がいただけなかった。。
「そういえば、指輪って何個買ってあげたっけ?」
「。。たったの5個よ。結婚9年たったのに。どういうことなの?
 しかも、出会ってからを考えたら12年よ。不遇だわ。。」
潮目が急に変わった。まずい、彼女はバブル世代だった。。(売り気配)
「いや。。それは、、、ちょっと貧乏だったし、、それに“出会ってから”って
 そこまで遡ることはないんじゃないか?そもそも。。」
「普通出会って、2回目に会うときは指輪とかプレゼントを持ってくるのが礼儀じゃないの?
 ほんと、常識がないわよね。そういえば、ひろからは何ももらわなかった。ほんと、不遇だわ。」
この場合、何が常識かどうかは議論してはならない。ここは辛抱の時だ。(15円安。)

何とか、一皿めの前菜が出て来て、悪い流れは止まってきた。
旨い。店の選択は正解だ。
みかちゃんの表情もなごむ。(2円高)
「いいわねえ。やっぱり外でいただく料理はこうでなくっちゃ。。」(5円高。)

c0024561_19204990.jpg二皿めの前菜が来た頃には、既にシャンパンは白ワインに変わっていた。(5円高)
彼女の選んだ料理は、白アスパラとホタテを使用した一品。
白アスパラの食べ頃は年に2週間とのこと。
彼女は、これが大のお気に入りで、今日はタイミングが良かったようだ。
「本当おいしいわ。季節なのよね。。」(買い気配)
ここは勝負だ。気の利いた一言が流れを決める。
「結婚記念日は、毎年同じ日なんだから、これから毎年白アスパラが楽しめるね。。」
「ほんとだ!」
彼女は微笑んだ。(10円高)
しかし、予想もしない次の一言がまた流れを変えた。
「でも、どうして9年目なのに、白アスパラを食べた記憶が2回しかないのかしら。。」(売り気配)


そう言えば、結婚して1年間は、給料を家に入れることを俺は忘れていた。
どうやって生きていたのだろうか。
彼女は、家に現金がないことを俺に言い出せずに、独身時代にためた貯金を毎週取り崩していたと聞いている。
彼女の父親は「俺が話をつけてやろうか」と彼女に言ったそうだが、彼女は止めたそうである。(涙)
結婚当時、俺は今は亡きゴルフ号のローンと、バブルに踊ったつけで数百万の負債をかかえ、
とても余裕資金などなかった。そして、確かに家に給料をおいていった記憶はない。。
これはまずいことを思い出された。。
「だいたい、ひろはさあ。。(怒)」(100円安)

c0024561_1921254.jpg今日は、本当に料理に救われる。
メインの仔羊が運ばれてきた。
さっとグラスの赤ワインを注文。(5円高)
この後、食後のチーズを頼み、彼女が気に入ったウオッシュチーズの名前を聞いたりして、
流れを再びもとに戻す。
幸い、料理はどれも非常においしく、かなり彼女も満足の様子。(10円高)
何とか乗り切れそうだ。
店員が食後の飲み物の注文を取りに来た。
「あ、僕はミルクコーヒーね」
俺は流し目で、流れるように注文する。
「それってカフェオレじゃないの?」(30円安)


店を出ると既に夜10時を回っている。
帰りは広尾から地下鉄に乗ろう。
せっかくなので、既にマンションマニアになっていたみかちゃんと、「麻布霞町パーク・マンション」を見学して帰ることにした。
その時、ふと、道ばたで黒い影が動いた。
「ねこだ!」
みかちゃんにとって、猫は極めて重要な生き物である。
猫に会えた日は、すこぶる機嫌が良く、逆に俺が見つけた猫をみかちゃんが見られなかったりすると、
その後、非難ごうごうなのは言うまでもない。
「何で、もっと早く言わないのよ!」
「いや、だって、猫も移動してるからなァ。」
「じゃあ、何でひろが見つける前に言わないのよ。」
「??。どうやって、見つける前に「猫だ!」なんて言えるんだよ」
「そこを何とかするのが、ひろのfunctionじゃないの?」
そんな不毛な会話を避けるためにも、猫を見つけたときはできるだけ早く、その事実を伝達する癖がついていた。
幸い猫は、恵まれた環境にいるのか、少し太っており動きも緩慢であった。
こんな時、俺の動きは一つの原則に従う。

『猫を驚かせないように、猫から離れ、みかちゃんの猫への接近をサポートする』

c0024561_19212341.jpgみかちゃんは、「にゃあ♪」と言いながら猫に接近していく。(5円高)
何やら猫と話をしているようだ。(5円高)
俺は、猫との距離をあけながら、車が来ないか監視の体制になる。
ここは記念撮影だ。
すばやく胸元に隠してあったJ-PHONE SH51を取り出し、記念撮影をする。
後で、見せれば評価はあがること間違い無しである。(20円高)
ニヤリと笑った瞬間に、猫が逃げた。。。(20円安)
「つまんない猫!」(20円安)



霞町パーマンを見た後、今度は10億ションで有名になった米荘閣跡地のマンション建設現場へ。
まだ、3次募集をやっている時期でもあり、建物は建っていなかった。
「しかし、募集ったって買えないよなあ。。」
二人で、ため息をつきながら、建設予定地の壁から中をのぞく。
かなり間抜けな状態で、ぼけっとしていると、道をこちらへ歩いている金持ち風のOLの存在に気づいた。
「変な人たち、、」
そういう感じで横を通り過ぎられた。
これは、間抜けだ。何か取り繕う必要がある。
別に悪いことをしていたわけじゃないのだが、何か気まずい感じがした。
ここで、日頃の営業の成果を出す時である。
機転を利かして、大きな声でこう言ってみた。

「あーあ、早く入居したいよね。。」
そのOLはぴくりともせず、そのまま歩いていった。(50円安)


結局、地下鉄を乗り継ぎ、浅草についたのは夜の0時すぎ。
料理は満足だったとのことで、全般的には良い結婚記念日だったようだ。
俺も自分の良いアレンジに気を良くしており、仲良く話をしながら、
二人はマンション一階のコンビニの前まで辿り着いた。
結構、料理のボリュームもあったので、彼女は満足であろう。
いつも、家に帰る前にコンビニで何か物色するのが常であるが、
今日はいいかな?そう思って、彼女に聞いてみた。

「今日は、寄らなくていいかな?」
「うん。。いいや」
「そうか、じゃ帰ろう」

そのまま、マンションの入り口まで歩いていった。
彼女は寂しそうに、こうつぶやいた。
「結婚9年目にもなると、プリンも買ってくれないのね。。」
そこで、俺は酔っぱらって言いたいことを言えるようになった時、みかちゃんが言っていた言葉を思い出した。


「プリンを食べたくない時なんてないのよ、本当は。。」
(ストップ安)

結婚10周年を来年に控え、俺の株価対策はまだまだつづく。
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by nekomekuri | 2003-06-05 19:19 | ねこかわいがり
イブニングカレー
今日は、特別な仕事があり、いつも通りの時間には家に帰れないことが分かっていた。
神保町、午後7時。

駅周辺は家路を急ぐ人、遊びに行く人で賑わっている、
一日を2分割するとすれば、後半の始まり、、街はそんな気分につつまれているようだった。
季節はもう初夏、外出がちな営業は皆、上着を片手に早足で歩く。
俺もまた、客先との交渉の成果とともに、次の戦略を練らねばならない。一刻も早く帰社すべきなのか?
「さて、どうしようかな」
ここで、できる営業マンは、差が付くのだ。
もう一度、スタートダッシュをかけなければならない。
考えるまでもなかった。「イブニングカレー」だ。

c0024561_19124719.jpgもう賢明なる読者はお気づきのように「神保町、カレー」と言えば共栄堂である。
入社一年目、コピー機の営業をやっていた俺は、外回り中に神保町に来ると、必ずここへ立ち寄っていた。

すこし古めかしい黄色のメニューには、「スマトラカレー」の言われが書いてあり、当時は、ここのカレーを貪りながら、遠いインドへの想いをつのらせたものだった。
(数年後、ボンベイ(ムンバイ)でカレーとスイカの食べ過ぎで激しい下痢にあい、死ぬ思いをすることになるとは想像できなかった。)

共栄堂は地下一階にある。

螺旋階段を下りていくと、茶色のソファーがある、いつもの店内が見えてくる。
昼間は並ぶこの店も、この時間だとなんとか座れるようだ。
自動ドアから店内に入ると、いつもの親父が俺を席へ案内してくれる。
メニューは見るまでもないのだが、ここは念のため目を通す。
何も変わっていない。
そして、俺の注文もまた昔から少しも変わらない。。
「ポーク、両方大盛りね」

説明するまでもないが、両方とは「ごはん」と「ルー」の両方大盛りである。
ポークは最も安いメニュー、これに両方の大盛りで800円+200円+100円で
1100円である。
今日は、このために昼飯も抜いた。
家を買おうとしているものにとって、ここらへんは堅実な行動である。
自分にしては良く耐えたと思う。

感慨に耽っていると、コーンスープが運ばれてきた。
このスープはくせ者である。
まず、これを先に飲まなくてはならない。
もし、カレーを食べた後にこれを飲んだりすると、もともとの薄味スープが
よりいっそう薄く感じられ
尚且つ、舌には熱い。
夏には間違えてはならない手順の一つである。
ゆっくりとスープをのみながら、黄色の店内に目をやり、しばし物思いに耽る。
「焼きリンゴ500円か。。」

この店のもう一つの売りは「焼きリンゴ」である。
これだけ、何度もこの店に来ているのに、いつも手が出ない逸品である。
昔から、
「そんな嗜好品を注文するなら、後で立ち食いうどんでも食おう。」
そういう思考回路の持ち主の俺であった。
昔に比べれば、給与も多少は上がっているのだが、やはり手がでない。
「いつか、もう少し偉くなったら。。」
そう思い、断念した。

昔、こんなおとぎばなしを聞いたことがある。
ある夫婦がひょんなことから、人生で一回だけ何でも叶う魔法を使える権利を手にした。
しかし、彼らは勤勉且つ堅実であり、何か欲しいものがあったりすると
「ここは、もうちょっとだけ頑張って、魔法は次のことで使いましょう。」
そういいながら、コツコツ努力し、最後はほとんど全てを努力で達成した。
二人で「魔法は何に使おうかねえ。。」そう言いながら、幸せに死んでいった、
人間はそんな風に努力をするものである。
目の前が少しだけ滲んだ。
いつか焼きリンゴをたべよう。そう思った。

c0024561_19121431.jpgしばらくして、カレーが運ばれてきた。
アラジンと魔法のランプのような容器に入っているカレー。
横に平べったいカレーをかけるスプーンと、縦に長いカレーを食べるスプーン。
様式美もここに極まれり、、と言ったところだが、
実際はそんなことを考えたわけではなく、すぐに食べ始めた。

「うまい、みかちゃんは、ここのカレーを小麦粉カレーと馬鹿にしているが、
 やはり、うまいものはうまい。」
皿の半分くらい食べ終わるまで、その時の記憶は欠如している。
ドアが開く音がして、やっと我に返った俺は、新しい客が入ってきたことに気がついた。
「?」
一見して、就職活動中のまじめそうな女子大生、一人であった。
地味な紺のスーツを着ている。
就職活動のため、髪の色を黒に染め直しているので、そう見えるのかも知れなかったが、
それでも、まじめな雰囲気が伝わってきた。

「大変だよなあ。。しかし、よほど腹が減ったのかな。女の子一人で共栄堂に入ってくるなんて。」
今日一日がんばって活動したんだろう、そして成果が芳しくなかったんだろう。
バブル時代に圧倒的売り手市場で就職した俺は、急に彼女がかわいそうに見えてきた。
就職できなかったら、バイトとかでつつましく暮らしていくのかな。。
でも、バブル時代と違って、洋服も最近は安いし、親元にいればまあ、暮らしていけるか。。
あの時と違って、今はじゃらじゃら付けるのは流行らないしなあ。。
幸せの姿はひとそれぞれである。人生いろいろ。
そう思い直し、残りのカレーを口に運んだ。
さっきより、すこし苦みが増した気がした。

その時、予想もしなかった会話が聞こえた。
「わかりました、”エビ”でよろしいですね?」
「エビ?」
すぐに、俺はメニューを手にとって確かめた。
1200円。
もう一回、俺は顔を上げて彼女の顔を見た。
彼女はいつの間にか足を組み、気のせいかふんぞり返っていた。
突然の怒りが体中に、充満した。
そして俺は、心の中でつぶやきながら、一気に残りのカレーをかき込み始めた。

「何故、昼飯を抜いて、両方大盛りを楽しみにしている俺が1100円で、就職活動中の学生が1200円なんだ???」
怒った俺は目の前にあった、無料のらっきょと福神漬けを大量に皿に盛り、残りのカレーを一気に飯の上にかけた。
食べ終わって、水を飲み干した俺はひとつの結論に達していた。

「エビを食うような奴は落ちる」

口を拭き、顔を上げてもう一度彼女の顔を見ようとした。
場合によっては、説教を食らわす用意さえあった。
「世の中はそんなものじゃない」
。。しかし。。。そこには、もう誰もいなかった。。
残された席には、まだ俺が一度も食べたことのないエビカレーが半分以上残されており、
アラジンと魔法のランプが、鈍く光りながら、俺を見つめていた。。



螺旋階段を上がると、そこはもう夜の神保町。
街は人々とネオンで覆われていた。
異国の味、スマトラカレーと人生の不思議に思いを馳せながら、
俺もまた、夜の街へ溶け込んでいった。。。


モーニングカレーもよろしく。
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by nekomekuri | 2003-06-01 19:09 | ねこかわいがり
低い車
社会人1年目から乗っていた愛車ゴルフ号が廃車となり、我が家は新たな車が必要になっていた。
中古車情報をくまなく探して、辿り着いたのは
走行距離12万キロ超の黒いセリカ。車高がやけに低い、明らかに改造車であった。
価格は33万円。PowerBookより安い。

中古車屋の努力によって、車内は新車のように美しく清掃されていたが、
サイドブレーキ後ろのカセット(!)ケースを開けると、そこには
謎の四字熟語の書かれたきらめくステッカーが貼ってあった。

ゴルフ号とは明らかに顔つきも違い、購入した当初はかなりの違和感を感じていたが、
慣れるにしたがってそんなことは気にならなくなり、
むしろ12万キロ走っているとは思えないスムーズな走りに次第に愛着が湧いていった。

何と言っても車高が地面すれすれのため、機械式駐車場でスペースの中央がでっばっているタイプが苦手。
銀座三越では、車の前方を駐車スペースの中央の凸に引っかけ
「ががががっ」
と大不協和音を響かせ、銀座系マダムたちから
「やあーね。。」
と眉をひそめられることにも、すっかり慣れっこになっていた。

そんなセリカ号も、普段は浅草の町にとけ込んでいたのだが、
我が家のマンション探し@おしゃれ系都心地区では、大変浮いた存在だった。
狙っているマンションが無謀なのか、都心の土地柄なのか、モデルルームの駐車場に並んでいるのは外車か国産高級車。
普段はぶいぶい言わせているセリカも、ベンツやジャガーに囲まれて、すっかり借りてきた猫のよう。
困るのが、不動産屋の担当者が駐車場まで見送りに来てくれるときだ。
さっきまでにこやかに話していた彼らがセリカを見るなり、
すこし動きがぎこちなくなるように見えたのは、考えすぎだったのだろうか。
いつもモデルルームから家路につく際、みかちゃんと
「まあ、“堅実なやつ”と好感を持たれているんじゃないか?」
「黒だから、すぐにはどんな車かわからないわよ。」(わかるよ。。)
「33万円だとは、どこにも書いていないしね。」
・・などと慰め合っていた。

長かったマンション探しもいよいよ大詰め。
先日、契約する(であろう)マンションの販売担当者と会った際、
ずっと気になっていた車高についての話をした。
その担当者は、一度も我が家のセリカを見ておらず、
今までこちらも敢えて車を見せないように上品(?)に振る舞っていたのは言うまでもない。
しかし、現実に駐車場を借りる際、車が入らなければどうしようもない。
かといって、新しい車を買える資金があるわけもなく、最悪の場合は廃車である。
追い込まれていた。

「あのー」
「何でしょう?」
「実は大変聞きにくい話なのですが、、車なんです。」
「車がどうかなさいましたか?」
「実は、私どもの乗っている車は大変車高の低い車でして、、」
「とおっしゃいますと?」
「割と、その、“走り”を重視するスポーツタイプの車を中古で買ってしまったものですから、
 車高が普通より、若干、いやかなり低めなんです。。立体駐車場でよく底をすってしまうのですが、
 大丈夫でしょうか?」
担当者は極めて上品に、しかし訳知り顔でにやりと笑った。

「そんなこと、早めにおっしゃっていただければ宜しかったのに。。フェラーリでございますね?
 ご心配はありません。もちろん対応してございます!」
「。。。」


そんな浮世離れした販売担当者のいるマンションは、
みかちゃんの趣味にしたがって選ばれていることは言うまでもない。
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by nekomekuri | 2002-11-03 19:09 | ねこかわいがり