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しらたま
夕食後、日本茶をすすりながら、ふと机上に目を落とした。
ポストイットに弱々しい字で、走り書きがしてある。

「白玉半分 、 おちゃ」

俺に見られると思って書いたわけではあるまい。
見てはならないものを見てしまったような気がした。
そういえば、さっき
「明日、お客さんが家に来るの。。」
と言っていた。

お茶とお茶菓子くらい用意しようと思っているにちがいない。
我が家の財政も日本経済同様、いまだ夜明けが見えないでいる。
しかし、お茶がないのも寂しいが、白玉を半分だけしか買えないと思っているのか。。
この前、お正月の餅がやっと食べられると大喜びで「ぜんざい」を作っていたが、
その残りのあんこを使うのだろう。あの時も、ずいぶん彼女は喜んでいた。
いくら困窮しているとはいえ、お茶菓子も買ってはいけないと考え、
自分で作ろうとしているのだろう。

それにしても、半分とは。。お客さんの分だけ作って自分は我慢するに違いない。
そういえば、そんなにたくさん牛肉を買った覚えがないのに、
すき焼きで結構肉が食えたりすることがある。
あとで、彼女に「意外に肉があったね」と言うと、
彼女は、ほとんど肉を食べていなかったりしたことが分かる。
「なんで。。。」と絶句すると、
「ひろが可哀想だから。。。」と答えることもある。
(実は、俺の食べる勢いに圧倒されたりしているらしい)

自分の甲斐性のなさ、彼女の苦労、、ふいに目頭が熱くなった。
思わず、急須にお湯を足しに行った、彼女の小さな後ろ姿に声をかける。

「なあ、白玉、ひと袋買っていいよ。」
「なあに、突然。。」


彼女は努めて明るくふるまっている。
「本当にいいよ。ひと袋買いなよ、白玉。おいしいよ、きっと。。
 半分なんて言うなよ」

もう、涙で目の前が見えなくなって来た。でも、顔をあげなくちゃ、
そしてにっこり笑ってあげなくっちゃ。。。
大丈夫だよ。お金、あるよ。そんなに家は貧乏じゃないよ。。
俺、もっと働くよ。。

「ああ、それ“半分”じゃなくて“粉”でしょ?
 漢字勉強したほうがいいんじゃない?
 字も読めないの?ほんとおじさんは困るわ」

闇は夜明け前が最も暗い。

追記・・・あとで聞いてみたら、白玉粉でだんごを作り、
     じゅんさいと一緒に酢の物にするつもりだったらしかった。

99'2.15
by nekomekuri | 2001-01-01 00:12 | ねこかわいがり
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